2019 年 75 巻 2 号 p. I_983-I_988
本研究では,福岡市西部水処理センターが試験的に実施している,処理水のリン濃度を冬季に高くして海域に放流する季節別管理運転(冬季緩和運転)によるノリ養殖場への栄養塩供給の効果を把握するために,下水放流口及びノリ養殖場周辺を調査し,放流口からのリンの拡散範囲を推定した.その結果,強風による海水の混合や植物プランクトンによる栄養塩類の消費により,PO4-Pは低下しやすいことが示唆された.一方,強風等の影響が小さい場合には,下水放流口から約1.0kmまでの範囲で処理水の放流による水温上昇や塩分低下,リン濃度の上昇が確認された.また,ノリ養殖に必要なPO4-P(0.0124mg/L以上)を満たす水が下げ潮の流れにより,放流口から西側のノリ養殖場へ供給されていることが確認された.