2020 年 76 巻 1 号 p. 1-11
被災した企業は,保険金を受け取って早い段階で復旧作業を行うことで,営業停止・停滞による損失を最小限に抑えることができる.しかし,自然災害は観測数が少なく,確率論的リスク評価に関する研究事例も少ないため,保険会社は保険金額の予想が困難なのが現状である.また,企業決算や保険契約は基本的に1年毎であり,1年間の期待被害額を見積もっておくことも重要である.本研究では,確率台風モデルで作成された1000年分の人工台風データを用いて,我が国の主要湾を対象に高潮災害の年集積リスクの評価を行った.高潮浸水解析を行い,年間被害額を算定した.年間被害額と年超過確率の関係を表すリスクカーブを作成し,年期待被害額を算定した.地域を選定して年集積リスク評価を行うことで,より実態に合った評価を行うことができることを示した.