2020 年 76 巻 1 号 p. 22-32
夏季北極海の海氷上では,雪や氷の融解水を起源とするメルトポンドが形成される.この時期の正確な氷況把握は,メルトポンドが海氷域面積の変化やその予測に与える影響を理解するために重要である.先行研究では,船舶前方の氷況を撮影した静止画から氷況把握のための画像解析法が開発された.この手法は,斜影変換が実施されなかったことに加え,開放水面,メルトポンド,海氷(3種類)が混在する表面状態の把握が難しい等の問題がある.これらの問題を解決するため,本研究では,斜影変換した静止画を用いて3種類が混在する表面状態の判別の改良を行い,本手法の汎用性とその展望を議論した.本手法は,海氷域の熱収支等の推定に必要な情報提供や衛星観測によるメルトポンドや海氷密接度の推定値を評価するツールとしての利用拡大が期待される.