土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
76 巻, 1 号
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和文論文
  • 平井 翔太, 安田 誠宏
    2020 年 76 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

     被災した企業は,保険金を受け取って早い段階で復旧作業を行うことで,営業停止・停滞による損失を最小限に抑えることができる.しかし,自然災害は観測数が少なく,確率論的リスク評価に関する研究事例も少ないため,保険会社は保険金額の予想が困難なのが現状である.また,企業決算や保険契約は基本的に1年毎であり,1年間の期待被害額を見積もっておくことも重要である.本研究では,確率台風モデルで作成された1000年分の人工台風データを用いて,我が国の主要湾を対象に高潮災害の年集積リスクの評価を行った.高潮浸水解析を行い,年間被害額を算定した.年間被害額と年超過確率の関係を表すリスクカーブを作成し,年期待被害額を算定した.地域を選定して年集積リスク評価を行うことで,より実態に合った評価を行うことができることを示した.

  • 田中 康弘
    2020 年 76 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/20
    ジャーナル フリー

     夏季北極海の海氷上では,雪や氷の融解水を起源とするメルトポンドが形成される.この時期の正確な氷況把握は,メルトポンドが海氷域面積の変化やその予測に与える影響を理解するために重要である.先行研究では,船舶前方の氷況を撮影した静止画から氷況把握のための画像解析法が開発された.この手法は,斜影変換が実施されなかったことに加え,開放水面,メルトポンド,海氷(3種類)が混在する表面状態の把握が難しい等の問題がある.これらの問題を解決するため,本研究では,斜影変換した静止画を用いて3種類が混在する表面状態の判別の改良を行い,本手法の汎用性とその展望を議論した.本手法は,海氷域の熱収支等の推定に必要な情報提供や衛星観測によるメルトポンドや海氷密接度の推定値を評価するツールとしての利用拡大が期待される.

  • 昇 悟志, 堀内 滋人, 三井 順, 久保田 真一, 千々和 伸浩, 岩波 光保
    2020 年 76 巻 1 号 p. 33-45
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

     消波ブロックの構造性能の評価手法を確立するために,消波ブロック被覆堤を対象に波浪によるロッキング衝突時の衝突速度の特性を明らかにするとともに,衝突速度や衝突回数を定式化することを目的に,ロッキング衝突実験を実施した.その結果,不規則波条件下における衝突速度の分布は正規分布で近似でき,変動係数はブロックの位置や周期,および可動角によらず一定となる特性を有していることが明らかとなった.また,衝突速度は波速と水深波長比,および波高に依存し,衝突回数はブロックの回転支点から重心までの距離と波高に依存することが明らかとなったとともに,両者の定式化も行った.

  • 大谷 俊介, 若林 徹, 中山 一秀, 岩波 光保
    2020 年 76 巻 1 号 p. 46-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     海水中における鋼材のミクロセル腐食は,環境に含まれる溶存酸素の拡散限界電流密度が支配的に影響し,その腐食速度が決まる.砂や石積みなどの障壁物に覆われた場合も同様であり,本研究ではこの拡散限界電流密度を障壁物の粒径,厚み,溶存酸素の拡散係数および濃度の4パラメータから推定可能とした.さらに,実環境下の鋼構造物を想定した場合は,ミクロセル腐食に加え,障壁部を境に形成するマクロセル腐食を考慮する必要がある.防食範囲を考える上では両腐食速度の合算値を評価し,適用範囲を定めるべきである.そのため,ミクロセル腐食については前述した推定手法を用い,マクロセル腐食については有限要素解析(FEM)を用いて,両腐食に起因する電流密度の収支から防食適用範囲について考察を加えた.

和文報告
  • 高木 泰士, Md Rezuanul ISLAM , Le Tuan ANH , 高橋 篤平, 杉生 高行, 古川 郁貴
    2020 年 76 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

     2019年9月9日に東京湾を直撃した台風15号の調査結果を速報する.神奈川では相模湾側で大きな高波被害は生じていなかったが,東京湾では直立護岸を乗り越える越波で被害が生じていた.千葉では九十九里浜ビーチ内の施設が被害を受けていた以外,目立った高波被害はなかった.一方,強風被害は激甚で,屋根の飛散や電柱の折損など各地で被害が生じていた.茨城でも高波被害は見かけなかったが,防波堤が堅固であることや,震災後の堤防改修が強靭化に寄与している.波浪追算の結果,ピーク波高は横浜で3.4m,東京や千葉で2.6mと推算された.湾内で急速に発達した高波が1m以下の高潮と相まって局地的な被害をもたらした.関東に上陸した過去の台風との比較では,今次台風はゆっくりと進んだ小型で強い台風と特徴づけられた.

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