2020 年 76 巻 2 号 p. I_396-I_401
本研究では,運輸安全委員会(船舶部門)による約10年分の報告書をもとに,船舶の係留施設への衝突事案618件,および船舶の走錨事案のうち走錨時の最大圧流速度の特定できる27件を対象に基礎的な分析を行った.その結果,船舶の係留施設への衝突事故は着岸時での発生が多く(全618件の約7割),さらに離着岸時の衝突事故は海側から陸側に向かって風が吹く場合に多く(全288件の約5割強),風力階級3(風速3.4~5.4m/s)から事故が急増することが分かった.また,港湾機能の停止を伴うような衝突事故は,コンテナクレーンなどの荷役機械への衝突,バルバス・バウの係留施設本体への衝突が要因となっていることが多いことも分かった.船舶の走錨については,平均風速が10m/s程度を超えると発生する傾向にあり,最大圧流速度は0.5~3m/sにも及ぶことが明らかになった.