2020 年 76 巻 2 号 p. I_49-I_54
日本周辺の沿岸海上風を正確に把握する手法開発を目的として,Sentinel-1に搭載された合成開口レーダ(SAR)による日本沿岸の5海域を対象とした海上風推定の精度検証を実施した.SAR画像は100×100mと500×500mの範囲でそれぞれ平滑化し,その後,風速推定を行った.500mで平滑化したときは,RMSEは1.31m/s~1.75m/sとなり,100mで平滑化したときよりも風速推定精度が高くなることが分かった.これは,人工構造物による強い後方散乱が海上風推定に影響しており,平滑化範囲を広げることでこの影響を軽減することができたからである.さらに,遠浅の海域では低風速時に砕波によって海面の粗度が大きく変化することで,SAR推定風速が実際の風速よりも過大評価されることが分かった.