2021 年 77 巻 2 号 p. I_709-I_714
日本海から瀬戸内海沿岸海域では,キジハタ,タケノコメバル等の有用岩礁性魚類の資源生産力向上のため,人工種苗を海域に放流し漁獲へ反映しようとする施策が実施されている.しかし,放流後の天敵生物による食害や適正な生育場(岩礁域)の不足等で歩留まりは僅かに1%程度となっている.筆者らが開発した保護育成機能を有する人工魚礁等の構造物へ放流した場合の歩留まりは,自然放流のそれに比べて高い値を保つことが実証されているものの,稚魚の生残や帰巣に関する定量的なデータが乏しく,正確な歩留まりを評価することが困難であった.本研究では,AIによりキジハタと,天敵となる魚類を判別する手法を開発するとともに,稚魚の人工魚礁への定着率および帰巣量を定量的に評価し,効率的な稚魚の放流技術を提案する.