2021 年 77 巻 2 号 p. I_727-I_732
対象施設の設計波の算定に用いる設計沖波は浅海変形が生じない深海域で設定するのが基本である.しかし,遠浅の海底地形や内湾に面する港湾等では,対象海域の風場による波浪の発達を考慮できるように,浅海域に設けた地点に対し深海条件の波浪推算を実施して疑似沖波を算定することも多い.一方,近年では浅海変形を考慮した波浪推算精度の向上が顕著であり今後の活用が期待される.
本研究では,浅海条件で得た推算結果を準沖波と定義し,沖波,疑似沖波との共通点・相違点を述べるとともに,準沖波を用いて堤前波を算定する波浪変形計算の方法や留意事項について秋田県能代港沖を事例として具体的に示した.準沖波に対し逆推定された沖波がその地点での波浪推算結果とよく似ていることは,同時に準沖波に対し算定された堤前波の妥当性を示している.