2021 年 77 巻 2 号 p. I_781-I_786
近年の極端台風の増加は,今後の災害対策における設計要件としての台風統計量の見直しの必要性について考える動機となっている.本研究では確率台風モデルを用いて,2009-2020年の台風資料の追加が台風統計量に及ぼす影響を調べた.近年の資料の追加によって,台風の通過頻度は全般的に減少する傾向にあった.また中心気圧の変化は小さいものの,平均値としては西日本側で減少,東日本側で増加する傾向がある.一方で極端台風の発生頻度についてはどの地点でも増大する傾向が見られた.進行速度については太平洋上ではやや減少する傾向が見られるが,日本付近では変化が小さく,特に日本海側西部において増加する傾向が見られた.これまでの確率台風モデルを用いた極値評価に大きな影響を与えるほどの大きな変化ではないが,温暖化による台風の強度増加といった,これまでに知られている温暖化の影響と一致するような変化傾向が表れた.