2021 年 77 巻 2 号 p. I_79-I_84
風波の下での底面境界層は水深に比べてきわめて薄いが,周期の増加に応じてその厚さを増す.そのため,津波や潮汐などの長波の下では定常流に類似した流れ場が形成されると考え,定常流摩擦係数が使用される.ただし,このような波動型から定常流型の境界層への遷移過程は明らかではない.本研究においては滑面乱流を対象として波動境界層の遷移に関する検討を行い,既往実験結果および新たに実施した実験結果をもとに遷移条件を定式化した.また,線形長波理論を用いて得られた判定式を変形し,波高・水深比,および水深・波長比で表示された簡便な式を得ることが出来た.この結果によれば,たとえ長波に分類されても定常流型の抵抗則を適用出来ない範囲が広く存在していることが判明した.津波による土砂移動などの算定にはこのような境界層の遷移を適切に反映する必要がある.