2022 年 78 巻 2 号 p. I_853-I_858
気候変動の緩和策として,水圏における生態系の光合成活動によって吸収される炭素である“ブルーカーボン”が注目されている.ブルーカーボンを形成している水草は浅水域全体に均一に存在するだけでなく,パッチ状に存在することも多く,流れとの相互干渉で複雑な流況を作り出す可能性が高い.その結果,水域における炭素吸収量も大きく影響を受け,その吸収量の正確な見積もりを困難にしている.そのような問題に対して,流れ場との相互作用を詳細に再現できる水草モデル(Submerged Aquatic Vegetation model:SAV model)が最近の研究で提案されている.しかしながら実際の環境に近い状態である水草群落が一部空間を専有する場合はこれまで検証されてこなかった.そこで本研究では,室内実験との比較を行いSAV modelの再現性を検証するとともに,流動場の解析を行った.その結果,SAV modelの高い再現性が確かめられ,水草群落周辺の流れ場において水草のたわみが流れ場を支配している可能性が示された.