2018 年 74 巻 4 号 p. I_59-I_71
活断層周辺で地震時に地表で生じる変状を数値解析等の手法で予測することは,変状が社会基盤に与える影響を考察する上で重要である.変形予測では,断層面形状,地下構造,広域応力場,岩盤材料特性,松田式に代表されるスケーリング則など様々な情報を積極的に統合・活用することが肝要である.本論文では,これまで地表変形解析に導入されてこなかったスケーリング則(松田式)を有限要素法に組み込む一手法を提案する.提案手法を上町断層系に適用し,得られた変位量とボーリング調査結果との比較を行い,一定の確度を有することを確認した.次いで,変位場の広域応力状態に対する依存性や断層面間の相互作用について検討し,変位が最大化される圧縮軸の方角や生駒断層と上町断層の相互作用についての知見を得た.