抄録
2016年熊本地震では,2度の震度7を含む地震により多数の橋梁被害が発生したが,多数の落橋防止システムが損傷したことに強い関心を示すべきである.落橋防止システムは落橋を防止するための最終手段であり,支承部が破壊した後でも落橋防止の機能が確実に発揮されるよう設置される.しかしながら,設計では水平耐力が規定されているものの,落橋防止システムの望ましい損傷形態が示されておらず,熊本地震でも様々な性状の損傷が発生している.本論は,まず橋梁の横変位拘束構造の被災状況を整理し,設計に対する課題を整理するとともに,また,府領第一橋に対して地震応答解析を行い,横変位拘束構造に作用した衝突力を推定するとともに,その被災メカニズムの検討を通じ,横変位拘束構造の縁端距離など,改善策について検討するものである.