2020 年 76 巻 2 号 p. 292-311
1978年に完成した荒川湾岸橋(首都高速道路湾岸線)は,2011.3.11東北地方太平洋沖地震でトラス橋の接合部を構成するガセットプレートに破断や大きな変形が生じた.本論文では,荒川湾岸橋を対象に,梁要素による橋梁全体系モデルとシェル要素による接合部に着目した部分詳細モデルを用いて,接合部損傷の再現性を検討した.橋梁全体系モデルでは,実際に生じた損傷箇所と応力度が大きくなる部材が概ね一致していた.部分詳細モデルでは,接合部に生じた大きな変形や破断が生じた部位を再現することができた.このように,接合部の損傷が力学的に説明できることは,設計では部材同士の結合条件でモデル化されるため損傷判定の対象外とされてきた鋼トラス橋の接合部の照査を,耐震設計では適宜行う必要があることを示唆している.