2020 年 76 巻 2 号 p. 312-319
堆積盆地や埋積谷のような不整形地盤ではその基盤形状を反映した堆積層の振動モードが形成されることが知られている.このことは観測記録等から堆積層の振動モードを同定できればその基盤形状をも推定できる可能性を示唆している.しかし,小規模な埋積谷では狭い周波数帯に振動モードが多数含まれる上ノイズも混在するため,モード同定そのものが難しいことが予想される.本研究では小規模な埋積谷の振動モード特性同定に関する基礎研究として,詳細な工学的基盤形状が既知の埋積谷を対象に多点常時微動観測を行い,FDD(Frequency Domain Decomposition)法を適用した.FDD法理論に基づく考察と数値実験を併用した比較検討から小規模な埋積谷の振動モード特性同定の可否を論じ,その方法論について提案した.