2020 年 76 巻 2 号 p. 401-410
高力ボルト摩擦接合継手の母材の引張降伏荷重は,母材純断面の降伏荷重に加えて,純断面に至る前の接触面の摩擦による荷重伝達も期待される.降伏に対する設計では,この摩擦伝達を見込むことで継手の降伏荷重が最大限活用可能となる.すべりが生じると静止摩擦から動摩擦となり摩擦係数が低下し,純断面力と摩擦力の関係が変化することが考えられる.しかし,すべり後にその関係がどのように変化するかは必ずしも十分に明らかとはなっていない.そこで,高力ボルト摩擦接合継手の母材の降伏挙動に着目し,すべり前後の挙動の違いを明らかにすることを目的に継手のFEM解析を実施した.その結果,すべり前では,母材純断面に至る前の摩擦力が純断面降伏荷重の10%以上期待される一方で,すべり後は10%以下となる場合があることが明らかとなった.