2021 年 77 巻 2 号 p. 243-254
地球温暖化によって海面水温(SST)が上昇しており,台風が成因となる風速の再現期待値の増加が懸念されている.しかしながら,将来のSST上昇の分布は不確定でもある.本研究では,過去のSST分布に対して一様にSSTが上昇した場合を境界条件とし,統計的台風シミュレーションを用いてSST上昇と風速の再現期待値における関係の推定を目的とした.まず,推定に用いた台風の移動モデルや,一様にSSTを上昇させる方法は,高解像度台風モデルの結果と比較することで妥当性を評価した.そして,一様なSST上昇により,東日本,西日本,九州周辺における風速の100年再現期待値は増加する結果が得られた.最後に,21世紀末には,それらの地域において,現在で再現期間400年に相当する風速が再現期間100年以下となる可能性を示した.