社会政策
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特集■「一億総活躍社会」の現実を問う
タクシー運転者を取り巻く様々な規制と「規制緩和」
中村 優介
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2020 年 11 巻 3 号 p. 42-56

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抄録

 政府が推進する「一億総活躍社会」の一つの柱として,「働き方改革」が掲げられた。その中には様々な問題点があるが,本報告では,「労働条件」,「規制緩和」という2つの側面から,タクシー労働者の就労と現在置かれている問題点について,報告をする。タクシー労働者を含む自動車運転業務就労者には,新しい時間外労働等の上限規制が及ばない。また,タクシー労働者の労働条件をめぐっては,賃金規程を含めて様々な裁判が提起されてきたのであり,現在も問題は山積している。また,タクシー事業は様々な規制の対象となっているのであるが,1990年代以降の規制緩和政策の中で,タクシー業界は過剰な競争にさらされ,運転手の収入は減少してきた。そして現在,ここに「ライドシェア」というさらなる規制緩和に類似した波が押し寄せてきている。本報告では,タクシー労働者をとりまく労働環境がどのように変わってきて,現在何が問題となっているか,そして「一億総活躍社会」の中で,今後どのように変わる可能性があるかについて検討し,報告する。

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