抄録
鋼矢板水路は作物生産基盤において広く用いられている.近年,これら構造材の長期耐久性と鋼材腐食との関係が技術的課題として議論されている.本研究では,腐食が進行した鋼矢板の保護工法を検討するために鋼矢板‐コンクリート複合材の適用を検討した.実験的検討は,モデル試験と実構造物で行った.鋼矢板‐コンクリート複合材の曲げ挙動の特性評価には,AE(Acoustic Emission)と荷重‐変位挙動を用いた.検討の結果,複合材の力学特性は,最大変位量と作用モーメントの関係により評価可能である.曲げ載荷過程での破壊挙動は,AE発生挙動と密接に関連していた.本試験結果から,鋼矢板表面にコンクリート被覆を施すことの有効性が定量的に評価できたものと推察された.