抄録
東日本大震災以降,施設・設備の被災を前提として,なんとしても命を守る防災・減災対策に主眼が置かれるようになった.その対応方法としてレジリエンスエンジニアリングの考え方が注目されている.この考え方では,災害の事前,事中,事後の各段階で「予見能力」,「注意能力」,「対処能力」,「学習能力」を備えたレジリエントな対応が求められており,このレジリエントな対応を事前に学ぶことにより,迅速かつ適切な災害対応ができるとしている.
レジリエントな対応を事前に検討し,学習するツールの1つとして,被災状況および避難状況のシミュレーション等があげられる.これまでも災害時の被災状況等をイメージするためにシミュレーションにより,被災状況,避難行動等が可視化され,防災教育に活用されてきた.しかし,それらは地域住民が自身で簡単に利用する事が出来ず,想定外の事態を議論することまで活用されていない.そこで本研究では,レジリエントな対応の考え方に基づき,想定外の事態の議論を行うツールとして,シミュレーション途中で議論しながらシミュレーション状況を変更できる参加型避難シミュレーションの活用を検討する.