土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
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特集号(和文論文)
南海トラフ地震時に四国の災害対応拠点が機能するための各施策と人材育成の課題と対策~熊本地震における基礎自治体の初動対応を参考にして~
岩原 廣彦白木 渡井面 仁志高橋 亨輔磯打 千雅子
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2016 年 72 巻 2 号 p. I_21-I_28

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抄録

 2016年4月16日に発生した熊本地震では,これまでの震災経験を活かすことができず,基礎自治体の災害対応も十分機能しなかった.これらの基礎自治体の多くは,事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)の策定がされておらず,災害対応能力を有する職員の不足とも相まって初動対応に混乱をもたらした.一方,南海トラフ地震発生時に,四国の災害対応拠点となる香川県の地域継続計画に必要な要素として筆者らは,(1)物流機能,(2)重要拠点機能,(3)応援・受援機能,(4)復旧・復興に関するヘッドクォーター,(5)ライフライン機能を提案している.南海トラフ地震に備えるにあたっては,この5要素が機能するため,産学官の枠を超えた組織間連携を念頭においた基礎自治体のBCP策定と,事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)の実施,さらに,発災時の臨機応変な対応能力を有する人材育成が重要となる.香川県と香川大学では,2015年度から共同で基礎自治体のBCP策定に地域継続計画(District Continuity Plan:DCP)の概念を織り込むとともに,BCMが実施できる人材の養成事業を実施している.本稿では,熊本地震における基礎自治体の初動対応を参考に,南海トラフ地震発生時において,香川県が四国の災害対応拠点として,適切な初動対応と行政機能を維持するためのBCP策定とBCMの実施推進の施策,さらに,発災時に適切な対応ができる人材の育成における課題と対策および実例について述べる.

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© 2016 公益社団法人 土木学会
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