2020 年 76 巻 2 号 p. I_185-I_192
従来の地震による都市の建物の被害評価は,経験的に得られた表層地盤の地震増幅特性や建物の被害率を使用して実施される.この手法は,一定の信頼性を有するが,ばらつきの大きな現象を経験的に扱うため誤差が大きい.本研究の目標は,数値シミュレーションを用いて建物一棟ごとに表層地盤と建物の地震応答解析を行うことで,既往の手法に比べて精度の高い手法を確立することである.これを実現するため,これまで著者らはボーリングデータを用いた地点ごとの表層地盤のモデル化手法の開発などを行ってきた.本論文では,約10万棟の建物のエリアを想定し,開発した手法を用いて,数値シミュレーションによる建物の被害評価を試行する.また,得られるマップを既往の手法によるものと比較し,提案手法による防災マップ構築の可能性について基礎的な議論を行う.