2020 年 76 巻 2 号 p. I_35-I_41
近年,100年に一度や200年に一度といわれる豪雨災害の発生率が上がっている.このような低頻度大規模災害については,ハード対策だけでは十分カバーできず,避難時の情報伝達などのソフト対策がますます重要とされる社会の到来が予想される.現在の主な避難情報伝達手段において,防災行政無線は特定の地域住民全員に情報を伝達できる,有用な情報伝達手段としての普及が期待される.しかしながら,近年の豪雨災害の被災者からは,その能力が充分に発揮されていないとの指摘がある.高齢者の多い地域などでは防災行政無線からの避難情報はきわめて重要で,こうした点は早急に解決しなければならない課題である.そこで,本研究では降雨の程度による防災行政無線の聞こえ方の変化を調べるために,雨音が放送の聞こえ方に及ぼす影響を簡易な模擬実験によって明らかにした.