2021 年 77 巻 1 号 p. 1-13
逆巻工法と鉄筋挿入工による斜面安定化を図る施工現場において,高精度傾斜計を用いて地山の変形挙動を観測した.さらに,施工中の斜面状況は,厚生労働省が発出した「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」にある調査・設計段階別点検表,日常点検表,変状時点検表,異常時対応シートで確認した.その結果,ガイドラインによる点検は安全対策として効果を発揮することを確認した.このガイドラインを用いた地質リスク抽出は,現場の安全管理だけではなく総合的なコスト・品質管理を行うことができることが分かった.これを実施するためには諸外国のように様々なリスクマネジメントについて,工事の上流側である発注者を含む調査・設計段階での斜面崩壊に対する意識を持ち,発注者,調査設計者,施工者間の情報共有が重要である.