抄録
セラミックス粒子製フィルタの微視的焼結程度を反映した機械的特性(剛性と浸透率)の評価方法の開発,及びミクロ・マクロ連関シミュレーション手法の開発を目的とし,通常は固液界面に整合するユニットセルメッシュを必要とする多孔質線形弾性体と非圧縮性粘性流体に対する固液複合均質化法を,界面上の境界条件を満足する二種類のエンリッチ関数を導入した拡張有限要素法(X-FEM)で離散化する方法を提案した.つまり界面非適合メッシュ上で固液境界条件を満足するエンリッチ補間法を提案した.通常の界面適合メッシュによる有限要素法,階段状近似のボクセル有限要素法,X-FEMによる提案手法との比較解析により,最適設計で問題とされる局所化精度,均質化精度,空間収束性能,及び固液界面が移動した場合の応答の検証を行い,提案手法の有効性を示した.三次元体心立方構造ユニットセルへの適用も示し,セラミックス粒子製フィルタの設計の指針となる巨視剛性と巨視浸透係数の関係を,規則メッシュによって効率的に評価可能であることを示した.提案手法の優位点をまとめれば,界面に整合しないユニットセルメッシュの使用が可能なこと,レベルセット値の更新のみで微視構造の変化(今回は焼結程度)を反映可能なこと,界面における境界条件を満足するエンリッチ関数を用いるためLagrange multiplier法などの拘束条件を必要としないこと,本検証問題の範囲内では,ボクセル有限要素法の性能を大きく上回り,界面整合メッシュ法に遜色ない解析精度と安定性が得られることである.