日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
レベルセット法に基づくコンプライアント熱アクチュエータの構造最適化
山田 崇恭山崎 慎太郎西脇 眞二泉井 一浩吉村 允孝
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2008 年 2008 巻 p. 20080007

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抄録

コンプライント熱アクチュエータとは弾性体の熱膨張を利用して,必要な弾性変形を生じさせ,それにより必要な機構的機能を実現するアクチュエータである.これらはその形状的特徴により,小型化などの多くの利点を持ち,特にMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)における応用が期待されている.このような機能構造物の形状設計については,設計者の勘や経験に基づいた多くの試行錯誤によって行われており,数学的および力学的根拠に基づいた統一的な設計法は未だ確立しておらず,必ずしも高性能な形状の設計に至っていないのが現状である.そこで,本研究では,新しい形状最適化の方法である,レベルセット法に基づく構造最適化を用いたコンプライント熱アクチュエータの最適形状創成設計法を構築した.始めに,それぞれの最適設計問題の設計要件を明確化し,穴の創出に必要なトポロジカルデリバティブを導出可能な目的関数を設定し,定式化を行った.さらに,その定式化に基づき,変位場と温度場の解析と,レベルセット関数の更新に有限要素法を用いた最適化アルゴリズムを開発した.最後に,2次元モデルでの数値解析を行い,本研究で提唱する方法論の有効性を検証した.その結果,本研究で提案する方法により,ヒンジ構造のない物理的に妥当で,明確なコンプライアント熱アクチュエータの最適構造が得られることがわかった.さらに,コンプライアント熱アクチュエータの変位の大きさを定性的に設定可能な最適構造が得られることがわかった.

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© 2008 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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