日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
粒子法に基づく圧縮性·点非圧縮性流れ統一解法
新井 淳越塚 誠一
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2008 年 2008 巻 p. 20080008

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抄録
本研究では圧縮性流れと非圧縮性流れを統一的に解析可能な粒子法アルゴリズムを開発した.流体の分裂や,合体などの複雑現象を解析する手法の一つとして,MPS (Moving Particle Semi-implicit)法がある.MPS法は粒子法の一種であり,計算点を移動させながらラグランジュ的な解析を行う.このため,有限差分法や有限体積法など,オイラー法を基礎とした解析手法でしばしば問題となる界面のぼやけや,計算メッシュの破綻が生じず,シャープな界面を捉えることが可能である.このため,砕波や液滴の分裂,波浪中の船舶への海水打ち込み問題などの解析が行われてきた.また,計算格子が不要のため流体構造連成への適用も容易に行え,弾性体のタンクにおけるスロッシングの解析例も見られる.ところで,MPS法は非圧縮性流れのための粒子法である.一方で,圧縮性流れのための粒子法としてSPH (Smoothed Particle Hydrodynamics)法がある.近年ではSPH法をもとに非圧縮性流れ解析へと応用した例も見られる.圧縮性流れと非圧縮性流れを同じアルゴリズムで解析しようというアプローチは,これまでにも行われている.例えば,限られた圧縮性を考慮するHirt-Nicholsの方法や,CIP (Cubic Interpolated Pseudo particle)法に基づく矢部らのC-CUP (CIP Combined Unified Procedure)法がある。前者の場合,基本的には非圧縮性流れの支配方程式に基づき,音速を指定することで比較的弱い圧縮性を考慮している.また,MPS法にも同様な手法が導入されている.しかしながら,衝撃波などを含むような流れの解析は原理的に行えない.後者のC-CUP法では,圧縮性流れの支配方程式に基づき,圧力の時間発展方程式を導いて圧力方程式を立てている.このため,非圧縮性流れから衝撃波を含むような流れまでを統一的に解析が可能である.しかしながら,これまでに粒子法に基づく圧縮性·非圧縮性流れを同時に解析する手法は見られない.本研究では非圧縮性流れ解析の手法であるMPS法をC-CUP法と同様なアプローチにより拡張し,非圧縮性流れと圧縮性流れを統一的に解析できる粒子法アルゴリズムを開発した.このようなアルゴリズムをMPS-AS (MPS for All Speed)法と呼ぶことにする.さらに,提案した手法を衝撃波管問題,ダム崩壊問題へと適用し,MPS-AS法が圧縮性流れと非圧縮性流れとを統一的に解析しうることを確認した.
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© 2008 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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