日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
粘弾性面外波動問題における演算子積分時間領域境界要素法および高速多重極法の適用
斎藤 隆泰石田 貴之福井 卓雄廣瀬 壮一
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2008 年 2008 巻 p. 20080011

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抄録
本論文では粘弾性面外波動問題における演算子積分時間領域境界要素法とその高速多重極法の適用について検討する. 線形粘弾性体の波動問題を時間領域で境界要素解析する際の最大の問題点は, 境界要素解析で必要な時間領域の基本解を解析的に求めることができないという点にある. そのため, 通常の手順で時間領域境界要素法を構成することが難しく, 時間領域境界要素法の影響マトリックスを周波数領域境界要素法の影響マトリックスから積分変換により直接数値的に求める方法や, 時間領域境界要素法の影響関数を周波数領域問題の基本特異解の積分変換により数値的に求める方法が用いられてきた. しかしながら, これらの解析手順は複雑であり, より扱いやすい線形粘弾性波動問題における境界要素法の定式化が望まれる. 近年, 著者らは, 時間に関する繰り込み積分を, ある重み関数を用いた離散化繰り込み積で置き換える手法であるLubichが提案した演算子積分(Operational Quadrature Method)を境界要素法に適用した演算子積分時間領域境界要素法や, 高速多重極法を用いた高速化に関する研究を行ってきた. 演算子積分法を用いた時間領域境界要素法は, 数値繰り込み積分を精度よく安定に計算できること, 定式化が従来の時間領域境界要素法に比べ簡易になるという利点を持つ. さらにこの方法では, 時間領域基本解を直接に必要としない. そのため, 時間領域基本解を数値的に求める必要があった粘弾性波動問題に対しては特に有効であると思われる.本論文では, 線形粘弾性面外波動問題に対して演算子積分時間領域境界要素法の定式化及び適用例を示す.さらに, 計算時間·記憶容量を改善するために高速多重極法を構成する方法についても述べ, 数値解析結果と共に, 本手法の有効性を確認する.
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© 2008 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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