日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
位相最適化手法を援用したブロック構造体の最適配置設計手法
中住 昭吾澤田 有弘往岸 達也鈴木 健手塚 明
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2009 年 2009 巻 p. 20090013

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抄録

セラミクスは比剛性が高く低熱膨張,高耐熱性等,構造部材としては優れた機能を有する材料であるが,一方でその部材大型化に関しては,炉の大型化・高価格化,歩留まりの低下などが障害となる.この短所を補う手段として近年,小型炉でも製造可能な大きさの小型ブロックを立体的に組み立て一体化することにより,多様な形状・大きさの三次元形状部材の作成を可能とするステレオファブリック造形と呼ばれる技術が提案されている.このブロック構造を構築する際,取り付け位置に応じてブロックの種類を変えられることが望ましく,ブロック種類・個数・配置位置を変数とする最適配置問題と見なすことができる.これは離散変数の数理的最適化に属する問題であるが,通常この問題を解くに当たっては考えられる離散変数の組み合わせ全てについて総当りの試行計算を必要とし,例え遺伝的アルゴリズム等の離散変数の最適化手法が用いたとしても膨大な計算量を必要とする.一方このブロック配置問題を,一体化構造物の形状の最適化問題と見なし,その形状が連続的に変化すると捉えるならば,寸法最適化,形状最適化,位相最適化等の各種最適化手法が既に確立されている.これらの手法は連続関数であるため勾配情報を用いることができ,効率よく最適解に到達できる.しかしながら連続的設計変数場を前提としており,ブロック構造に適用した例はない.本論文では,このブロック構造が適用される大型構造物として,産業界において液晶パネルの製造に使用されるXYステージを想定する.そしてセラミクスブロック構造を含めた一般的ブロック群から構成される実構造物の設計にあたり,不可欠となる離散化変数の最適化問題であるブロック配置問題を,連続関数の最適化手法の一種である位相最適化手法を活用して短時間に妥当な解を得る方法を提案する.ベースとなる位相最適化手法は,設計変数すなわち密度が連続な値をとるものとして行われるが,ブロックパターンとの対応付けのため,その設計変数に対して適当な閾値を元に離散化処理を施すと,最適解であるとの保証は失われる.離散化により重量制約率が満足されなくなるからであるが,提案する手法では,最適化の反復計算ごとに得られる全ての離散変数解を重量-コンプライアンス平面上にプロットし,そのプロット点群がつくる領域の下限値を連ねることで最適な解を導出することができる.ただしこの最適化反復計算の中で,設計変数の更新処理は常に連続的設計変数に対して行うものとする.すなわち最適化のループは連続的設計変数を基に繰り返される.これは,もし離散化処理を施した設計変数から勾配情報を得ると,不連続性を持つ関数から勾配情報を得ることになり,誤った最適化の方向へ進む可能性があるからである.それに対して連続的設計変数から勾配情報を得つづければ,通常の位相最適化と同様,最適解が存在する方向へ反復計算が進行することを期待できる.数値解析例として,セラミクス材料からなり一様分布荷重及び自重によりたわみ変形を生じるXYステージを扱った.与えられた重量制約下で,ステージのたわみ量に対応するコンプライアンスの最小化を目的関数とする構造最適化問題を解き,二種類の荷重条件下におけるコンプライアンスと重量率の関係を示す解群,及びそのブロック配置パターンを導出した.

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© 2009 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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