日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
外周に軸対称荷重を受ける厚肉円筒シェルの応力波伝播
石丸 和宏中筋 真紀
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2011 年 2011 巻 p. 20110010

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抄録

円筒シェルは工学的用途に種々用いられており,そのため内外周に衝撃荷重を受ける場合の動的挙動に関する研究が行われている.有限要素法 (FEM) は最も一般的な数値解析法であり,動的解析においても DYNA3D に代表されるいくつかのソフトが利用されており,平板構造だけでなく,様々な構造においても解析が行われている.しかしながら,有限要素法は近似解法であるため,その精度を前もって評価することは困難である.特に応力波の伝播問題は波頭の追跡が重要であり,波の進行方向によほど細かい要素分割を用いないと精度よい解を求めることは難しい.そのため,近似解法のベンチマークとして動弾性論に基づく厳密解を求めることは非常に重要であると考える.これまで,動弾性論による有限弾性体内の応力波伝播特性は小林,著者らが動弾性論に基づく固有関数展開法によりその手法の妥当性と衝撃応答解析を行ってきた.これらのデータは衝撃発生点からの応力波が上下面で反射を繰り返しながら,次第に物体内に応力波が充満し曲げ状態に至る動特性が明らかにされており,これらの数値計算結果は衝撃を受ける構造物の動的挙動に関する基礎データとして貴重であると考える. 円筒シェルを対象にした解析は古典的な薄シェル理論とせん断力を考慮した修正シェル理論等があるが,いずれも厚さ方向の応力が考慮されておらず,衝撃問題で重要な厚さ方向の応力が表されていない.Weingarten-Reismann は Fluggeの古典シェル理論,Mirsky-Herrmann のせん断変形を考慮した円筒シェル理論による解析結果を比較しているが,厚さ方向の応力は示されていない. 本研究では 3 次元動弾性論に基づく固有関数展開法を等方性の軸対称円筒シェルに適応し,応力波伝播解析を行っている.応力波伝播解析の定式化は動的解を自由振動解析で得られる固有関数と静的解の和とし,まず級数解である固有関数を求め,次に静的解を求める.数値計算ではすべて無次元化して計算を行い,時間に関してはステップ状,空間に関しては軸対称な等分布荷重を受ける場合とし,衝撃問題で重要な厚さ方向の応力を中心に応力波の伝播状況を詳細に調べた.その結果,応答は応力波の到達とともに大きく変動することがわかった.

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© 2011 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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