2020 年 20 巻 p. 53-66
英国では既存の機関から独立し,苦情等をもつ子どもの意見表明権を支援する訪問アドボカシーが実施されている.筆者らは,英国をモデルとして児童養護施設を定期訪問する「訪問アドボカシー」を2年間試行的に行った.本稿はアドボケイトを利用した子ども19名,職員7名にインタビュー調査を行い,事前ニーズ調査(2014年~2015年)との比較から実践を踏まえた意義・課題を明らかにすることが目的である.職員の多忙さ等を背景に,子ども・職員双方が個別面談を高く評価した.面談で子どもが不満を話すことで落ち着き,自分から話すようになったといった【子どもに肯定的変化があった】.職員は「後回し」になっていた子どもの思いを聴こうと【職員の権利意識が向上した】.一方,子どもは訪問時間が短いという【時間不足】を課題とした.職員は秘密保持等の【アドボケイトの原則への不満】【役割のわからなさ】を語っており,役割理解は容易ではないことが改めて確認された.