2024 年 24 巻 p. 25-35
本研究の目的は,子どもの権利の視点から母子生活支援施設職員がとらえた子どもの「声」とそれに基づく支援を明らかにすることである.母子生活支援施設における子ども支援に関する議論では,子どもの「声」を職員がどのようにとらえ,支援に反映してきたか,検討が十分なされていない.そこで,10年以上の勤務経験のある母子生活支援施設職員4名を対象にインタビュー調査を行った.分析したところ,{抑圧と解放のはざま}{解放に向けた支援}{回復する「声」}{抑圧がはたらく}{奪われた「声」}の5つを抽出した.考察の結果,以下の3点を明らかにした.第一に「声」を奪われた子どもは良好な人間関係を避けること,第二に職員は子どもの解放を促し,良好な人間関係を築いていること,第三に母子関係が抑圧的であっても職員による支えが子どもの「声」の回復に有効であることが明らかになった.