子ども家庭福祉学
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巻頭言
論文
  • 山本 真知子
    2024 年24 巻 p. 1-12
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2025/01/10
    ジャーナル フリー

    本稿は,日本において今後増加すると考えられる実子を養育する里親に焦点を当て,実子と委託児童を共に養育した経験のある里親が,子どもを養育する中でどのような葛藤を持ち対処しているか,どのような支援を求めているかを明らかにすることを目的とする.

    実子と委託児童を養育した経験のある里親9名へのインタビュー調査を行い,質的データ分析法により分析を行った.その結果,里親は〈実子がいるからこその養育の困難〉を抱え,他の里親や専門職からの〈偏見や孤独感の中の養育〉や〈理想とは違う里親制度〉の中,〈里親養育を安定させるための対応〉や〈他者の力を借りる行動〉によって,〈実子がいる強みを生かす養育〉を行っていた.

    今後展開される里親養育支援において,地域における格差をなくし,それぞれの里親や子どもに合わせた支援の必要性が求められることを示した.

  • 西野 緑
    2024 年24 巻 p. 13-24
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2025/01/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,チーム学校による子ども虐待対応における子どもアドボカシーのあり方および「制度的アドボカシー」の担い手としてのSSWrの可能性を実践的に検証することを目的とする.具体的には,SSWrによる子どもアドボカシーの実態と課題を明らかにすることを目的とし,SSWrへの聞き取り調査を実施し,質的分析を行った.

    その結果,①子どもアドボカシー実践とは,ケース・マネジメントのプロセスを通して,子どもの主体性を取り戻すこと,②学校で子どもアドボカシーを実践するには,子どもへの直接支援はもちろんのこと,教職員や保護者にも関わり,学校に変化を起こし,学校や保護者を子どもを応援するチームに変えていく必要があること,③上記のような活動をするには,現状では時間や立場の限界があり,学校から「たまに来る人」と思われることやSSWr自身も自分が出すぎてはいけないという思いとの葛藤を抱えていたことがわかった.

  • 浅田 明日香
    2024 年24 巻 p. 25-35
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2025/01/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,子どもの権利の視点から母子生活支援施設職員がとらえた子どもの「声」とそれに基づく支援を明らかにすることである.母子生活支援施設における子ども支援に関する議論では,子どもの「声」を職員がどのようにとらえ,支援に反映してきたか,検討が十分なされていない.そこで,10年以上の勤務経験のある母子生活支援施設職員4名を対象にインタビュー調査を行った.分析したところ,{抑圧と解放のはざま}{解放に向けた支援}{回復する「声」}{抑圧がはたらく}{奪われた「声」}の5つを抽出した.考察の結果,以下の3点を明らかにした.第一に「声」を奪われた子どもは良好な人間関係を避けること,第二に職員は子どもの解放を促し,良好な人間関係を築いていること,第三に母子関係が抑圧的であっても職員による支えが子どもの「声」の回復に有効であることが明らかになった.

  • 厨子 健一, 吉田 朋美, 山田 瑞紀
    2024 年24 巻 p. 36-46
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2025/01/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,学校教育現場に配置されているA市における常勤のスクールソーシャルワーカー(SSWer)の業務量に焦点をあて,その実態を明らかにし,スクールソーシャルワーク(SSW)事業の検証につながる基礎資料を得ることを目的とする.派遣型,拠点校配置型でのSSW事業を展開している自治体のSSWer 8名を対象にタイムスタディを行った.結果,全体において,1日の勤務時間(休憩を除く)に占める割合が高かった項目は,記録作成(23.6%),教員との打合せ,相談,助言(対面)(13.1%),移動(9.3%)であった.反対に割合が低かった項目は,子ども・保護者と面談(対面)(1.4%),ケース会議(1.5%),保護者と面談(対面)(1.9%)となった.この知見を踏まえ,SSW事業の構築,改善を図るための課題を示した.

  • 福島 里美, 麻生 典子
    2024 年24 巻 p. 47-60
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2025/01/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,養育困難場面における里子・養子の行動と養育者の対応を調べることを目的に,小学生,高校生,大学生を育てる3名の養育者に面接調査を行った.各事例の面接記録を①子どもの行動,②子どもの気持ち,③養育者の対応 に分類し,KH Coderを用いて複数回出現した語の抽出と,共起ネットワーク図の作成をした.

    その結果,いずれの事例も,初期の親子関係を作る時期は,子どもと一緒の時間を過ごし,子どもの行動の背景を理解して対応した.相談機関の活用は,子どもを理解する上で役立っていた.また,子どものことを大切だと言葉で伝えることは,子どもとの関係の安定につながっていた.日本の家族は,言葉を介さなくても心理的な一体感をもつ関係が特徴であるが,愛情を言葉で伝えることは,養育者の交代を経験した子どもとの信頼関係を作る上で,重要だと考えられる.

  • 木村 将夫
    2024 年24 巻 p. 61-73
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2025/01/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,児童発達支援センターで行われる家族支援について,「児童発達支援ガイドラインによる家族支援測定尺度」を開発し,スタッフの性別,年代,経験年数や職種等の属性比較から支援提供の現況を検討することにある.調査の結果,「家族支援測定尺度」は,156データを用いて,探索的因子分析により得られた因子構造を帰納的仮説とし,仮説演繹法による確認的因子分析を行った結果,2因子斜交モデルによる「保護者との協働的アプローチ」と「子育て環境にフォーカスした支援」の2側面で構成されることが示された.適合度はCFI=.911, RMSEA=.090でこのモデルの適合の良さを支持する結果を得た.因子間相関は,r=0.698であった.本尺度について,ファミリー・ソーシャルワークとの関連を考察した.家族支援の属性比較では,経験年数が7~9年のスタッフは3年以下のスタッフに比べて,保護者との協働的な支援の認識が高いことが示された.

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