抄録
本研究の目的は悲嘆が強く生じる、子どもを亡くした親の心理的プロセスを子どもの発病から死別し、現在に至るまで探索的に検討することであった。病気で子どもを亡くした親5名に半構造化面接を実施し、M-GTAによって分析を行った。分析の結果、子どもを亡くした親は、【子どもの病気によるショック】から【自身の認知の再構成】(概念:27、カテゴリー:12)の局面を経て、現在まで子どもを亡くした悲しみと共に生活していた。発病後からのソーシャル・サポートの提供者は、死別後まで継続的に親を支えていた。一方で、死別後からのサポートの提供者は、それがたとえ精神科の専門家などでも本研究の協力者にとって、信頼関係の構築は困難であった。以上から親には、発病後から専門的な心理支援が重要である。また、発病直後からのソーシャル・サポートは、現在に至るまで親を支える可能性が検討されたことにより、ソーシャル・サポートの情報提供が医療者には求められる。最後に死別後に適切な支援ができる死別に精通した専門家の育成が必要になる。