日本小児看護学会誌
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最新号
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研究
  • 富田 美香, 大西 文子, 岡田 摩理
    2025 年 34 巻 p. 1-9
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:小児看護専門看護師が長期入院した子どもをもつ家族の家族機能をアセスメントするために行う情報収集時の具体的な注意点を明らかにする。方法:長期入院が多数ある病棟に勤務する小児看護専門看護師に個別のインタビュー調査を行い、質的分析をした。結果:6カテゴリーと16サブカテゴリーを見出した。小児看護専門看護師は【家族を尊重し、ありのままの情報を引き出す】、【家族との関係性を作りながら、家族の真意を探る】という基本的な姿勢をもち、【家族のおかれているいまの状況をアセスメントしながら聞く】、【聞くタイミングを逃さない工夫をする】、【気になる情報を深め、広げる】、【チームで効果的に情報を取ることを意識する】の技を活用していることが見出された。考察:小児専門看護師の基本的な姿勢、情報収集の技、チームで情報を取る意識をほかの看護師が情報収集に活用できるようにしていく必要がある。

  • 加藤 美香, 上田 敏丈, 堀田 法子
    2025 年 34 巻 p. 10-17
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     「医療的ケア児(医ケア児)」の就学先選考プロセスと、その過程での保護者の思いを明らかにし、就学前支援の示唆を得ることを目的とした。就学または就学予定の医ケア児の保護者5名に、就学先決定要因、就学先決定時の思いなどについて半構造化面接調査を行い、SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析した。就学先選考プロセスには「伝聞的情報の収集」、「マッチング」、「体験的情報の収集」からなる就学活動期、就学先決定期があり、全期を通しての精神的サポートがあった。保護者の思いには、就学情報取得の困難感、複数の葛藤、就学先選択に影響する条件の優劣、学校側の態度に付随する思いがあった。保護者の主観的な価値観の明確化、必要十分な就学検討情報総量の獲得、精神的サポートの充実は、安心感、納得感のある就学先選択の支援となる示唆を得た。

  • 小笠原 史士, 福井 美苗, 北尾 美香, 藤田 優一
    2025 年 34 巻 p. 18-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     思春期がん患者と親のエンドオブライフの意思決定を支えるために看護師が実践している具体的な内容について明らかにするため、小児看護経験5年以上で思春期がん患者のエンドオブライフケア経験がある看護師9名を対象に半構造化インタビューを行った。看護実践は、65コードが抽出され、それらの抽象度を上げ19サブカテゴリー、5カテゴリー【患者や親の治療方針の意思についての確認】、【患者が患者らしく生きるための調整】、【患者に説明するための準備】、【患者や親との信頼関係の形成】、【患者の思いやそこに至るまでの把握】が生成された。看護実践には患者を理解するための働きかけも見られた。思春期患者には意思決定する上で十分な情報が渡っていないこともあるので、看護師は患者がどのように意思決定をしているかアセスメントしていると考える。また、入院初期から患者に積極的にかかわることが意思決定のための信頼関係構築につながると考えた。

  • 田畑 久江, 今野 美紀, 浅利 剛史
    2025 年 34 巻 p. 27-34
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究では、これまで開発してきた「先天性心疾患をもつ幼児の主体性を育むための看護支援モデル」について、熟練看護師がどのようなタイミングで活用できると認識しているかを明らかにすることを目的として質問紙調査を行った。その結果、熟練看護師の記述より、看護支援モデルの34項目すべてが活用できると認識されていることが明らかとなった。また、看護支援モデル活用のタイミングは、入院時、医師からの説明時、検査・処置・手術時、看護ケア時、退院時、定期受診時という疾患の治療や検査に関連したタイミング、就園・就学時という幼児のライフイベントに関連したタイミング、幼児が嫌がる時、家族が答えてしまう時という幼児や家族の反応に関連したタイミングに分類された。「先天性心疾患をもつ幼児の主体性を育むための看護支援モデル」に本研究で明らかとなった活用のタイミングを盛り込むことで、より活用しやすいものとなると考える。

  • 新井 二千佳, 谷本 真唯, 木浪 智佳子, 三国 久美
    2025 年 34 巻 p. 35-42
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、医療的ケア児(医ケア児)との暮らしの中で抱く小児期にあるきょうだいの思いを明らかにした。きょうだい8名に半構造化面接を行い質的記述的に分析し、8カテゴリーを生成した。きょうだいは同胞のことを大体わかっており、同胞と仲良しだと思い、同胞との暮らしは普通だと認識していた。また同胞の健康を大切にしたいと願い、家族みんなで同胞を守りたいと思っていた。さらに、同胞と暮らすことは自分にとって良いことも嫌なこともあると思っていた。そして医ケア児のきょうだいのことが気になり、医ケア児とその家族が暮らしやすい社会になってほしいと願っていた。看護師はきょうだいの発達段階とそれに伴うきょうだいと医ケア児の関係の変化に注目し、きょうだいが本音を表出できているか観察しながらかかわること、きょうだいが利用できるサービスの情報提供や人々が医ケア児や家族のことを知る機会を作るといった支援の重要性が示唆された。

  • 望月 浩江, 添田 啓子, 田村 佳士枝
    2025 年 34 巻 p. 43-51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     小児集中治療の場で看護師がとらえる子どもの力の見えづらさと子どもの力を引き出す看護を明らかにすることを目的に質的記述的研究を行った。看護師10名に半構成的面接を行い修正版Grounded Theory Approachにて分析した。看護師は子どもが鎮静下や不安定な状態であること、小児集中治療の場の要因により、小児集中治療の場では【子どもの力の見えづらさは増幅する】ととらえている。看護師は子どもの力をとらえる努力をして子どもの力を確認し《消耗をさせないように、子どもの生きる力を整える》、《病気や治療の悪影響を防ぎ、発達や生活のためにいまできることをする》、《子どもの状態とニーズに合わせ、回復に向けて子どもの力を引き出す》。《看護の効果として、子どもの力の変化をとらえ》、さらに子どもの力を引き出す看護を行い【見えづらさを超えて、子どもの生きる力を整え、回復に向けて子どもの力を引き出す】ことが明らかになった。

  • 村松 三智, 三国 久美
    2025 年 34 巻 p. 52-59
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     子どもの困ったと感じた行動に、母親がどのように対処しているのか明らかにすることを目的に、乳幼児を育てる13人の母親を対象に半構造化面接を実施し、質的記述的に分析した。その結果、母親が困ったと感じた乳幼児の行動への対処として11のカテゴリーが生成された。子どもへの直接的な対処には【子どもの行動に備える】、【子どもが切り替えられるようにする】、【子どもに教育的な声掛けをする】、【子どもをひとりの人間として尊重する】、【子どもに強要する】、母親自身が認知的に行う対処には【子どもに譲歩する】、【子どもに巻き込まれないようにする】、【心の安定を保つ】、【内省してより良い対応を探る】、【子どもの成長への見通しをもつ】、社会資源を用いた対処には【母親以外のリソースを使う】があった。体罰を含む不適切な対処に至らないように、子どもの発達や状況にあわせて母親が複数の対処法を持てるような支援が望まれる。

実践報告
  • 浅利 剛史, 篠嶋 澪, 田畑 久江, 今野 美紀
    2025 年 34 巻 p. 60-67
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:採血を受ける幼児の「がんばった」を支援するために作成した看護師を対象とした学習プログラムの効果を看護師の認識と実践の変化から明らかにすること。

     方法:A病院の小児科病棟に勤務している卒後3年目の看護師2名を対象とした。学習プログラムはミニレクチャー、その後のワークで構成した。学習プログラム後に行ったインタビューを質的帰納的に分析して効果を評価した。

     結果:17カテゴリー、50サブカテゴリー、93コードが得られた。認識への効果は「エビデンスが得られたことで生じた実践しようとする意思」、実践への効果は「実践しようとする意思が生じたことにより増加したケアの頻度」が見出された。

     考察:学習プログラムは看護師の省察的実践のサイクルを円環的に展開することを支援し幼児の「がんばった」を支援するケアを促進させた。

  • 田中 さおり
    2025 年 34 巻 p. 68-76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、成長ホルモン治療(以下、GH治療)を行う子どもをもつ母親にピア・サポートを取り入れたプログラムを実施し、その効果について評価することを目的とした。GH治療中の子どもをもつ母親2名と子どものGH治療終了後2年未満の母親1名に、1回60分/1か月からなるプログラムを3回実施した。調査項目のうち、プログラムの満足度と自己効力感、QOLは質問紙より調査した。プログラムの受け止めやプログラムに関するニーズは、面接より調査した。自己効力感はプログラム後、2名が1点増加し1名が不変であった。QOLの平均点はプログラム後、全員に若干の上昇が認められた。プログラム後に≪他の母親に触発され治療により前向きになった≫といった語りが聞かれた。調査結果よりプログラムの有用性が示唆されたが、少数の結果であるため効果を評価することには限界がある。今後は参加者を増やしプログラムの効果をさらに検討する必要がある。

資料
  • 岩瀬 桃子, 大橋 麗子
    2025 年 34 巻 p. 77-86
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、子どもを対象としたバイタルサイン測定の演習方法の実態と傾向を明らかにすることである。医学中央雑誌Web版を用いて検索し、19件を分析対象とした。対象論文を発行年、演習対象とツール、演習事例、演習方法、評価方法の観点から整理し、経年的変化も検討した。子どもを対象としたバイタルサイン測定の演習に関する研究は継続的に発行されていた。演習方法は、モデル人形を用いるものが多く、視聴覚教材やモデル人形に反応を付与することで実際の状況に近づける工夫がなされていた。演習方法は、経時的にタスク・トレーニングから状況設定シミュレーションへ変化していた。評価方法は、技術評価に加え学生を主体とした振り返りやフィードバックが行われる傾向が見られた。事例や教材、状況設定の工夫、シミュレーション教育の活用により、子どもを具体的にイメージして実践できる演習方法を模索していくことが必要であると示唆された。

  • 長谷 美智子, 小泉 麗
    2025 年 34 巻 p. 87-95
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     在宅生活する医療的ケアの必要な重症心身障害児の養育者の体調管理の様相を明らかにすることを目的とし、ケアの中心を担う養育者11名を対象に質的記述的研究を行った。その結果、【子どもの不安定な体調の管理を中心にした生活をおくる】、【子どもとの生活を維持するために必要な支援を受ける】、【養育者の体調を安定させる生活をできる範囲で心がける】、【生活をコントロールできる程度が養育者の体調に影響する】、【体調が不安定になる】という5つのカテゴリーが抽出された。養育者自身の体力や考え方・サポートを組み込んで構築した生活リズム、子どもの体調、自分を活かすことのできる居場所を含めた生活のコントロールにより養育者の体調が変化するため、食事や感染対策など体調を安定させる工夫への支援だけではなく、養育者自身の体調管理への考え方を尊重し養育者の体調管理も含めた生活リズムが構築できるよう継続した支援が求められている。

  • 嶋 和城, 松森 直美
    2025 年 34 巻 p. 96-103
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、混合病棟で働く小児看護経験の浅い看護師の抱く小児看護の良さややりがい、難しさや小児看護の学習状況、どのような学習を望んでいるのかを明らかにすることである。成人・小児の混合病棟で働いている小児看護経験年数が3年未満の看護師7名を対象に、面接ガイドに沿って半構成的面接(約30分)を実施し、目的に該当する文章データを質的帰納的に分析した。その結果、109件の文章データを抽出し、53コード、16カテゴリー、4上位カテゴリーに分類し、【小児看護のやりがいと難しさを認識しながら行う看護実践と家族への配慮】、【実践を通した小児看護の学習】、【小児看護の学習状況に対する不安】、【小児看護研修の要望と同時に抱く成人・高齢者看護への志向性】が明らかとなった。看護師が求める研修内容や研修方法をより明確にし、小児看護教育の充実に向けた取り組みが必要であると考える。

  • ~へき地で生活するための看護支援~
    宮里 優人
    2025 年 34 巻 p. 104-111
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

     医学の進歩を背景に、医ケア児が増加している一方で、緊急時などに対応可能な病院へアクセスしやすい場所で生活することを希望することが推測されるが、居住地の自由な選択が難しい状況にあると考える。本研究では、へき地である離島で生活する医ケア児の両親の思いを明らかにし、へき地で生活するための看護支援を検討する。対象者はB島で生活する医ケア児2名の両親であり、無記名自記式アンケート調査を用いてデータ収集し、質的統合法で分析した。両親は、緊急時の対応や医ケア児への偏見、本音を語れない辛さ、育児の負担といった困難を抱えながらも、島での生活に安堵感を覚え、子どもの成長を願うといった複雑な思いをかかえていた。へき地で生活する医ケア児とその家族が安心して生活できるよう、医療従事者は、養育者の緊急時対応能力の向上、医ケア児とその家族への理解促進、養育者の負担軽減といった多角的な支援の必要性が示唆された。

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