抄録
好中球ライソゾーム殺菌酵素Myeloperpxidase (MPO)は,自己抗体MPO-ANCAの抗原となり,血管炎の発症に関与している.その抗原性は,MPO欠損マウスにより明らかにした.また,MPO-ANCAのエピトープの解析から,MPOのH鎖のNおよびC末端に反応するエピトープが,血管炎の重症化と関連していることが判明した.MPOは,本来,好中球に存在する強力な殺菌物質OCL−を産生する酵素で,欠損マウスの解析からCandida alibcansなど抗真菌作用として働き,殺細菌・殺真菌の生体防御に関与することを明らかにした.ところで,治療法開発や発症機構解明に,病態モデルが必須であり,MPO-ANCAを産生する急性進行性腎炎である自然発症病態モデルSCG/Kjマウスを用い,好中球の活性化が血管炎発症に関わっていることを明らかにした.また,C. albicansの膜成分(CADS)やwater soluble glycoprotein (CAWS)によって誘導するMPO-ANCA関連の冠状動脈炎マウスを用いて,その病態を解析した.