日本臨床免疫学会会誌
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総説
スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬,フィンゴリモド(FTY720)の自己免疫疾患治療への応用
千葉 健治
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2009 年 32 巻 2 号 p. 92-101

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抄録

  世界初のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬であるフィンゴリモド(FTY720)は,冬虫夏草の一種,Isaria sinclairii由来の天然物マイリオシンの構造変換によって得られた化合物で,同種移植モデルや自己免疫性脳脊髄炎,関節炎などの自己免疫疾患モデルにおいて,強力な免疫抑制作用を発揮する.FTY720が免疫抑制作用を発揮する用量範囲では末梢血リンパ球が著しく減少するが,これは循環リンパ球が二次リンパ組織内に隔離されたためである.FTY720は生体内ではスフィンゴシンキナーゼによってFTY720リン酸(FTY720-P)に速やかに変換され,二次リンパ組織からのリンパ球移出に必須の役割を果たすS1P1受容体にアゴニストとして作用し,S1P1受容体の内在化を長時間,強力に誘導することが明らかにされた.したがって,FTY720-Pによってリンパ球上のS1P1受容体の発現が著しく低い状態に維持されるために,二次リンパ組織からのS1P1依存的なリンパ球移出が阻害され,免疫抑制作用が発揮されると考えられる.最近,再発性の多発性硬化症を対象とした臨床試験においてFTY720は優れた治療効果を示すことが明らかにされた.以上から,S1P1受容体調節作用を有するFTY720は,多発性硬化症等の自己免疫疾患への新しい治療法を提供しうると期待される.

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© 2009 日本臨床免疫学会
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