日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
自己免疫性関節炎におけるTNFα-induced adipose-related protein (TIARP)の新たな作用機序
井上 明日香松本 功田中 陽子住田 孝之
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 1 号 p. 51-55

詳細
抄録
  関節リウマチ(RA)は,関節滑膜を主病変部とする炎症性疾患であり,病因として異常増殖した滑膜細胞などから産生される炎症性サイトカインTNFαやIL-6の過剰な分泌が考えられている.近年このTNFαやIL-6をターゲットとした生物学的製剤が開発され,RAの治療に顕著な成績を上げている.glucose-6-phosphate isomerase (GPI)は関節炎自然発症モデルであるK/BxNマウスの自己抗原として同定されたユビキタスに存在する解糖系酵素である.この合成GPI蛋白をDBA/1マウスに免疫することにより早期に関節炎を惹起できる.このモデルを用いて関節炎病態に寄与する分子を探索するためにDNAマイクロアレイを試行したところ,TNFα-induced adipose-related protein (TIARP)が関節炎マウス脾臓で高発現することを明らかとした.さらに我々は,関節局所においてもその増強を認め,腫脹の程度に合わせて変動することを見出した.また我々はTIARPが脾臓CD11b陽性細胞(マクロファージ,好中球)ならびに関節の滑膜細胞に局在することを明らかとした.TIARPのヒトorthologであるsix-transmembrane epithelial antigen of prostate 4 (STEAP4)蛋白も,マウス同様にRA患者滑膜細胞に発現していた.本稿では,自己免疫性関節炎およびヒトRA病態において新規関節炎抑制分子と考えられるTIARP/STEAP4分子について概説し,我々の見出したTIARP/STEAP4の新たな機能について紹介する.
著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top