抄録
ウイルス性心筋炎に対するステロイド治療の是非に関して見解は定まっていない.最近の報告では副腎皮質ステロイドはグルココルチコイド受容体を介して心筋保護的に作用することが報告されている.そこでマウスウイルス性心筋炎モデルを用いてdexamethasoneの効果を詳細に検討した.3週令♂A/Jマウスにcoxsackievirus B3 (CVB3) 2×104 PFUを腹腔内投与し心筋炎を作成した.CVB3のみを投与した群(CVB3群),dexamethasone 0.15 ml/日を5日間投与した後,6日目にCVB3を投与した群(DEX-pre/CVB3群),CVB3を投与した後,dexamethasone 0.15 ml/日を5日間投与した群(DEX-post/CVB3群)の3群を作成した.14日後にマウスの心筋を採取し,左室内径,壁厚,ウイルス力価(TCID50)を測定し,それぞれ3群間を比較した.またCOX-2阻害実験として,NS-398のみを投与した群,NS-398とCVB3を投与した群(NS-398/CVB3),CVB3のみを投与した群,NS-398とCVB3を接種しdexamethasone連日投与した群(NS-398/DEX-pre/CVB3 & NS-398/DEX-post/CVB3)の生存分析を行った.CVB3群は,左室内径の拡張と壁厚の減少,ウイルス力価の上昇を認めたが,DEX-pre/CVB3, DEX-post/CVB3群においてはその変化は有意に抑制されていた.NS-398を用いた阻害実験ではウイルス接種と共にNS-398を使用した群の方が全例とも超早期に死亡したがdexamethasoneの早期投与により生存率を有意に改善した.以上より,マウスウイルス性心筋炎においてdexamethasone早期投与はウイルス性心筋炎の治療に有効であり,その一因としてCOX-2が心筋保護的に作用している可能性が示唆された.