日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム
合同シンポジウム2-5  がんワクチン創薬への道程:がん抗原の同定から臨床試験まで
鳥越 俊彦廣橋 良彦塚原 智英島 宏彰水口 徹平田 公一佐藤 昇志
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2013 年 36 巻 5 号 p. 313

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抄録

 我々は過去20年以上にわたってヒトがん抗原の同定とそれに対する免疫応答の分子機構を解明し,Survivinをはじめとする10種類以上のヒトがん抗原とそのHLA class I拘束性T細胞エピトープの構造を明らかにしてきた.抗原ペプチドを用いて患者の末梢血リンパ球を刺激すると,ペプチド特異的細胞障害性T細胞が誘導される.平成14年度からSVN-2Bペプチドワクチンの臨床試験を開始.平成23年度からは医師主導治験を実施している.Tetramerを用いた免疫モニタリングの結果,ペプチド特異的T細胞の頻度と抗腫瘍効果との間に相関性が見出された.また,インターフェロンの併用によって臨床効果が増強することが判明した.10月には進行膵臓がんに対する第2相試験(二重盲検試験)をスタートする.
 一方で我々は,ヒトの固形腫瘍細胞株からがん幹細胞(CSC)を分離することに成功し,現在CSC特異抗原の探索を実施している.がん幹細胞は,長寿命・高い造腫瘍能力・高い遊走能・抗がん剤耐性などの特性を有することから,がん再発と転移の根幹をなす細胞であると推察されている.CSC特異抗原はどのような分子か,CSC特異的細胞障害性T細胞の誘導とCSC標的治療モデル等を紹介し,がん幹細胞標的ワクチン創薬に向けての歩みと展望についても議論したい.

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© 2013 日本臨床免疫学会
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