日本臨床免疫学会会誌
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第43回総会ポスター賞受賞記念論文
シェーグレン症候群における口腔内病変と唾液中EGFの関係
東 直人片田 圭宣北野 幸恵西岡 亜紀関口 昌弘北野 将康橋本 尚明松井 聖岩崎 剛佐野 統
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2016 年 39 巻 1 号 p. 42-50

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抄録

  シェーグレン症候群(Sjögren's syndrome: SS)患者では口腔乾燥症状に加え,口腔粘膜や舌乳頭の萎縮,難治性口内炎などを生じ,それに伴う口腔内の疼痛や不快感によりquality of life(QOL)が著しく低下する.このような口腔内病変の形成は主に唾液分泌量減少による口腔内クリアランスの低下に起因すると考えられている.しかし,唾液には種々の生理作用があり,その障害が病態形成に関与している可能性があると考え,唾液中に含まれ口腔と消化管の粘膜保護や組織修復に促進的な役割を果たしているとされるepidermal growth factor(EGF)とSSにおける口腔内病変形成との関連性を検討し,将来の治療介入の可能性を追求した.その結果,SS患者では進行に伴い唾液分泌量のみでなく,唾液中EGF量も低下することが判明した.罹病期間が長期化すると,唾液中EGF量減少は唾液分泌量減少に比べ短期間で進行していた.そして,この唾液中EGF量低下という「唾液の質」の低下が口腔内病変の形成や難治化,口腔内QOLの低下と強く関与していることが示唆された.これらより,EGFを何らかの方法で口腔内に補充することができれば,SSの新規治療介入ポイントになると考えられた.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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