日本臨床免疫学会会誌
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WS4-2 ヒト歯髄幹細胞無血清培養上清を用いた関節炎モデルマウスにおける治療効果の検討
山本 朗仁石川 純
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2016 年 39 巻 4 号 p. 353b

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抄録

  関節リウマチ(RA)は多発性関節炎を主徴とする原因不明の炎症性自己免疫疾患である.近年,生物学的製剤の登場によりRAの治療成績は劇的に改善したが,2~3割のRA患者では治療の奏功が認められない.我々はヒト歯髄幹細胞無血清培養上清(SHED-CM)に着目し,これまでにSHED-CMに含まれるケモカインMCP-1と分泌型レクチンSiglec-9が抗炎症性M2マクロファージ(mΦ)を誘導することを報告してきた.本研究では,関節炎モデルマウスに対するSHED-CMの治療効果の検討とそのメカニズムの解析を目的とした.抗Ⅱ型コラーゲン抗体を用いた関節炎モデルマウス(CAIA)にSHED-CMを関節炎発症後に単回経静脈的に投与した.SHED-CM投与群では対照群に比較して,関節炎スコア,組織破壊の程度が有意に改善した.定量的PCRで炎症性M1mΦマーカーの低下,抗炎症性M2mΦマーカーの上昇を認めた.また,SHED-CMから分泌型Siglec-9のみを除去したd-SHED-CM投与群では,SHED-CM投与でみられた関節炎スコアや組織破壊の改善効果が減弱していた.SHED-CMには様々なパラクライン因子が含まれていることがわかっており,RAに対して多面的に治療効果を示すと考えられるが,本研究結果から,その治療メカニズムには抗炎症性M2mΦの誘導が中心的な役割を果たしていることが示唆された.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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