日本臨床免疫学会会誌
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ワークショップ2 低分子化合物と生物学的製剤の長所と短所
WS2-4 低分子化合物と生物学的製剤の長所と短所 炎症性腸疾患のエビデンスと経験から
長沼 誠水野 慎大筋野 智久金井 隆典
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2017 年 40 巻 4 号 p. 266b

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抄録

  潰瘍性大腸炎およびクローン病は若年に発症し,再燃と寛解を繰り返す炎症性腸疾患(IBD)である.以前は病因・病態が不明で治療に難渋する症例が多かったが,原因となる免疫学的機序や環境因子の研究が進み,以前より治療により病勢がコントロールされる例が増えてきている.ステロイドは中等症以上の活動性を有する症例の中心的な治療法であるが,寛解維持効果がない点,ステロイド抵抗例や依存例が存在することが以前の治療法の問題点であった.2001年に生物学的製剤であるinfiliximabがクローン病に使用可能となり,その治療効果の確実性・即効性より,難治例のみならず,長期予後の観点から診断早期にEarly intervention therapyとして使用される症例も増えている.現在IBDに対して使用可能な生物学的製剤・低分子化合物は抗TNF抗体製剤(infliximab, adalimumab, golimumab)および抗IL-12抗体(ustekinumab)であり,今後接着分子阻害薬であるvedolizumabやJAK阻害剤であるtofacitinibが使用可能となると考えられ,またいくつかの生物学的製剤・低分子化合物が治験中である.IBDの治療選択肢が増えていくことは望ましいことであるが,中長期的に約30-40%の効果減弱例に対する対応,医療費の観点から治療開始と中止のタイミング,感染症を中心とした副作用への対応などの課題も存在する.本発表ではIBD診療における生物学的製剤の有用性と問題点について概説したい.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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