2017 年 40 巻 4 号 p. 274b
骨吸収機能を介して骨の恒常性維持にかかわる破骨細胞は,単球・マクロファージ系前駆細胞から分化するマクロファージサブセットのひとつである.破骨細胞の形態学的特徴のひとつとして,酸化的代謝の中心オルガネラであるミトコンドリアを豊富にもつことが古くから知られているが,この生理的意義については十分に理解がすすんでいない.近年,我々は,破骨細胞で亢進する酸化的代謝が,細胞分化の重要な制御基盤となることを見出した.即ち,酸化的代謝に依存してメチル基供与体である代謝物S-アデノシルメチオニン(SAM)が増加し,これに伴ってDNAメチル化制御が亢進することで破骨細胞分化が促進することを明らかにした.そこで,本発表では,破骨細胞における細胞内代謝の新たな意義と「破骨細胞分化」と「細胞内代謝様式の改変」を結びつける分子実体としてのエピジェネティック制御の重要性について議論したい.さらに,今回新たに見出した破骨細胞制御機構が,破骨細胞の異常が原因となる骨代謝疾患に対して有効な創薬標的となる知見についても解説したい.