日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー3 ヒトT細胞
ES3-3 造血器腫瘍に対する抗原特異的T細胞を用いた免疫遺伝子治療
越智 俊元
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2017 年 40 巻 4 号 p. 281a

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抄録

  T細胞は体内免疫の中心的な役割を担う免疫細胞である.これまでに,T細胞を利用したがんに対する様々な細胞免疫療法が開発され,造血器腫瘍を含めた難治性がんを対象として臨床試験が進められてきた.その治療効果から,がんに対するT細胞免疫療法は,手術,化学療法,放射線療法に続く第4のがん治療法として近年注目を集めている.T細胞は,T細胞受容体(TCR: T-cell receptor)を用いてがん細胞を選択的に認識する.そこで,治療効果と安全性の向上に向けて,がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を正常T細胞に遺伝子導入して,がん特異的T細胞を体外で増幅しがん患者に輸注する養子免疫療法の臨床試験が行われた.最近では,T細胞のがん細胞認識能力をさらに高めるために,がん特異的TCR遺伝子を適切に改変する手法や,がん細胞を標的とした抗体の可変領域遺伝子をもとに人工的に改変受容体を作成する手法が開発されている.本技術によって,効果的にがん細胞を傷害する次世代型遺伝子改変T細胞の作成が可能となり,国内外の臨床試験において有望な治療成績が報告されている.加えて,患者T細胞を体内でがん特異的に刺激,活性化する二重特異性抗体製剤の開発研究も進められている.本講演では,がん特異的T細胞を利用した造血器腫瘍に対する細胞免疫療法の最新の話題を紹介する.そして,がん特異的受容体/二重特異性抗体の開発研究にも焦点を当て,我々の研究成果を含めて概説したい.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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