日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー3 ヒトT細胞
ES3-2 自己免疫疾患の病態と治療における濾胞性ヘルパーT細胞の重要性
中山田 真吾馬 暁雪久保 智史田中 良哉
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2017 年 40 巻 4 号 p. 280b

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抄録

  濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞は,B細胞成熟・活性化,抗体産生を誘導するヘルパーT細胞である.ヒト自己免疫患者末梢血ではTfh細胞が疾患活動性や自己抗体価と相関して検出される.我々は,Tfh細胞は分化,機能の双方で他のヘルパーT細胞と可塑性を有すること,SLE患者末梢血では可塑性を有する活性化Tfh/Th1細胞が特異的に増加することを報告してきた.In vitroの解析では,Tfh/Th1細胞の分化はIFN-γ/STAT1によるpriming phaseを経由し,IL-12/STAT1/STAT4によるBcl-6誘導のeffector phaseを介する多段階プロセスで形成された.さらに,Tfh細胞のマスター転写因子であるBcl-6遺伝子座はbivalent domain様のヒストン修飾を受けており,Tfh/Th1様の細胞形質を誘導するエピゲノム修飾はSTAT蛋白の結合により制御された.この結果は,JAK/STAT経路の制御が有力な治療標的となる可能性を示唆した.現在,JAK1/2阻害薬によるSLEに対する臨床治験が進行中である.一方,SLEでは疾患のheterogeneityが高いことが報告される.当科の末梢血免疫フェノタイピング解析では,高疾患活動性SLE患者はヘルパーT細胞フェノタイプの相違により3つの亜集団に分類された.そのなかでTfh細胞が増多する亜集団は治療抵抗性と関連した.以上の結果は,既存治療で制御困難な症例におけるTfh細胞の病態関与を示唆するとともに,免疫学的異常に基づいた亜分類の同定によるprecision medicineの重要性を示している.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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