日本臨床免疫学会会誌
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6-thioguanine (6-TG)-neo耐性変異ヒトlymphoma細胞株の樹立
池脇 信直
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1988 年 11 巻 4 号 p. 346-356

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抄録
Burkitt lymphomaであるRaji細胞をエチルメタンスルフォン酸400μg/mlで処理し, 6-thioguanine(以下6-TG)1×10-4Mで選別することで6-TG耐性細胞株, Raji 6-TGR細胞を得た.つぎに, pSV2 neo DNAをliposomes-mediated gene transfer techniqueを用いてRaji 6-TGR細胞に導入し,ネオマイシン誘導体(G418)で選別することでneo耐性マーカーを発現した細胞株Raji 6-TGR-neoR細胞を樹立した.この細胞株は細胞表面にIgを発現せず,また,培養上清中にIgを全く分泌しないことがELISA法によって明らかになった.さらに, HAT培地(hypoxanthine: 1×10-4M, aminopterin: 2×10-8~1×10-7M, thymidine: 1.6×10-5M)に対して感受性を示し, hypoxanthine-guanine phosphoribosyl transferase(以下HGPRT)酵素を欠損していることがわかった.すなわち, Raji 6-TGR-neoR細胞はヒトB細胞ハイブリドーマを作製するための親細胞として利用できることが示唆された.そこでRaji 6-TGR-neoR細胞を親細胞にして, PWM刺激または未刺激ヒト末梢血単核球からヒツジ赤血球ロゼット形成法によって分離されたB細胞およびB細胞株(CESS細胞)とをポリエチレングリコール法で融合を行い,新しい選択法(G418加HAT培地; HAT-neo選別)で選別することでヒトB細胞ハイブリドーマの作製を試みた. 1ヵ月後,それぞれの実験群におけるハイブリドーマの出現率を算定したところ, B細胞(2%), PWM刺激B細胞(5%), CESS細胞(11%)の出現率を示した.また,特にPWM刺激B細胞の実験群から得られたハイブリドーマについてHLAクラスII抗原および染色体数を検討したところ,得られたハイブリッドクローンは両細胞の特性を有したハイブリドーマであることが明らかになった.以上,本実験からRaji 6-TGR-neoR細胞は新しい選択法(HAT-neo選別)によるハイブリドーマ選別が可能な興味ある親細胞であることがわかった.
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