日本臨床免疫学会会誌
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ラット腹膜を用いたOK-432による好中球遊走の機序解析
I.補体活性阻害剤および蛋白分解酵素阻害剤による検討
加藤 治樹井上 衛山村 義治谷川 真理佐野 統杉野 成近藤 元治
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1988 年 11 巻 6 号 p. 566-574

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抄録

癌性腹水に対してOK-432を腹腔内投与すると,数時間以内に多数の好中球が腹腔内へ遊走し,それらによる抗腫瘍効果が知られている.ここでは好中球遊走の機序についてラットを用いて検討した.ラット腹膜上に置いたfilter membraneに付着する好中球数により好中球の遊走を検討すると, OK-432 1KE/ml単独とこれに10% NHS (正常ヒト血清)を加えたものとの間には,遊走する好中球数に差はなかった. OK-432 1KE/mlをコントロールとして各種薬剤をともに作用させると, FUT-175 10-4M, K 76 2,000μg/ml, FOY 10-3M, urinastatin 5,000U/mlでラット腹膜よりの好中球遊走は抑制された.しかし, in vitroではFUT-175, K 76は同じ濃度でC5aの生成を抑制したが, FOY, urinastatinは抑制しなかった.これらのことから, OK-432腹腔内投与による好中球遊走にはC5aの作用が重要と考えられたが,さらに局所においては凝固,線溶,キニン系の関与が示唆され,組織学的にも再確認された.

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