抄録
全身性エリテマトーデス(以下SLE)に下垂体腺腫を合併した稀な1例を報告した.症例は1987年にSLEと診断された32歳の女性で, 1990年4月に視力,視野障害を主訴として,当院へ再入院となった.頭部CTでは,下垂体に境界明瞭で均質な腫瘤が認められた. MRIでも下垂体に腫瘤を認め,その一部は蝶形骨洞にもおよんでいた.内分泌学的検査では, TSH, T3, T4,プロラクチンが軽度増加していたのみであった. 4月19日腫瘍の全摘が行なわれた.術後本例の視力,視野障害はともに著明に改善し,抗核抗体は陰性化した.女性ホルモンに限らず,なんらかの内分泌学的異常が存在することが, SLEの免疫学的異常に影響をおよぼす可能性も考えられた.下垂体腺腫を合併したSLEの症例は極めて稀であり貴重な症例と思われ,若干の文献的考察を加えて報告した.