日本臨床免疫学会会誌
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慢性関節リウマチ患者およびモデルラット関節炎における滑膜チロシンリン酸化の検討
佐野 統川人 豊向井 滋彦浅井 清木村 茂加藤 治樹近藤 元治Ronald L. Wilder
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1994 年 17 巻 5 号 p. 525-533

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抄録
慢性関節リウマチ(RA)の病態は,滑膜の腫瘍性増殖による骨・軟骨破壊である. RAの滑膜ではfibroblast growth factor (FGF)-1やplatelet-derived growth factor(PDGF)などの増殖因子やPDGFレセプター(α, β)の発現が報告されている. FGFやPDGFのレセプターはチロシンキナーゼ活性をもつことが知られている.今回,われわれはRA患者やモデルラットを使って関節局所のリン酸化チロシン蛋白(PT)の発現を調べた.
RA患者では滑膜表層細胞,フィブロブラスト様細胞,血管内皮細胞,炎症性単核球にPTの強い発現がみられた.一方, OA患者や正常滑膜ではPTはほとんど発現されなかった.さらに,ラットstreptococcal cell wall (SCW)関節炎では関節炎の発症に伴い滑膜,軟骨,周囲皮膚においてPTの発現がみられた.アジュバント関節炎では臨床症状発現以前よりPTの発現がみられた.しかし,ヌードラットではPTは一過性にしか発現されず,関節炎抵抗性のFisherラットではまったく発現されなかった.
以上より, RA滑膜の腫瘍性増殖にPTの発現が重要な役割を演じていると考えられた.
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